噛(か)むことの重要性について

現代人の食事を考えてみると、調理された柔らかい料理が多くを占めています。そのことが影響しているのか、食べ物を良く噛まない子、硬い食べ物を嫌う子も増えているようです。ある研究によると小学生の4人に3人が噛む回数が足りないという報告があります。また、小学生と江戸時代の人達とを比べると、噛む回数は半分以下になっていると言われています。

噛むことの役割は、まずは食べ物を切ったり、砕いたり、すりつぶしたりして、飲み込みやすくすることにあります。そして、食べ物を口の中で移動させることで混ぜ合わせ、美味しさを増す効果もあります。さらには食べること以外にも意義があることが明らかになっています。

脳梗塞など脳の病気では、噛むことや飲み込みの機能が障害され、食べることが難しくなります。脳梗塞が起こった直後には元気が無くても、しばらくして病状が落ち着き、ある程度食べられるようになってくると、意識もはっきりして元気になってきます。それは単に栄養がとれるようになったというだけでは説明できないことも多いといわれます。例えば鼻から管を通して必要な栄養をとっていた人が、口から食べはじめることで、明らかに元気になっていくのです。普段、私たちは意識することもなく食べものを噛んで飲み込むということを繰り返していますが、その噛むというあたりまえの行為が脳に良い影響を与えることがわかってきています。そこで鍵になるは歯の根っこ(顎の骨に埋まっている部分)にある歯根膜(しこんまく)という部分です。噛むことで歯根膜が刺激されると、その刺激は神経を通って大脳の運動、感覚、記憶、思考、意欲に関係する部分を活性化させることが明らかになっています。

 

もし、歯が抜けてしまった場合は口の形にあった入れ歯を作ることが大切です。入れ歯を使って噛み続けることで口の中の粘膜が歯根膜の代わりに働くことが分かっていて、入れ歯でしっかり噛んで食べることでも、脳に良い刺激を与えることができます。また、入れ歯を入れないと歯を噛み合わせられない為、あごの位置が定まらずに体のバランスを崩しやすくなり、しっかり噛みしめられないことにより、体に力が入りづらく踏ん張りがきかずに転倒のリスクを高めてしまうこともあります。

このようによく噛んで食べることはより良く生きるために必要なことの一つです。しっかり噛んで脳を活性化し、歯がなくなっても入れ歯を活用することで頭も体も健康を保って元気に暮らしていきましょう。

 

リハビリテーションクリニックやまぐち
言語聴覚士 照屋究